- Blog 1: 製品ラインアップ間での設計共通化
- Blog 2: 異種製品間での設計共通化
「設計を共通化したい」というご要望をよく耳にします。設計を共通化することは、部品のコストダウンだけでなく、将来的なメンテナンス工数の圧縮にもつながるというメリットもあります。特にRX23E-Aが主要なターゲットとしている産業用センサ機器は、製品ライフサイクルが長く、仕様も多種多様という特徴がありますので、共通化するメリットも大きいと言えます。
共通化には、大きく分けて、二つの方向性があります。一つは、同一製品間での共通化です。例えば、ハイエンド品とローエンド品の共通化などが挙がられます。もう一つの共通化は、異種製品間での共通化です。例えば、圧力計と温度計の共通化などが挙げられます。今回は、前者の同一製品間での共通化に、RX23E-Aが貢献した事例についてご紹介します。
RX23E-Aは、ΔΣADCを2unit搭載しているRX23E-A/2unitsと1unitだけ搭載しているRX23E-A/1unitをラインナップしています。RX23E-A/2unitsとRX23E-A/1unitを使い分けることで、設計の共通化ができた事例がありますので、ご紹介します。なお、ご紹介する事例は、一部、著者の想像も含まれます。
事例1 : 荷重計測
1つ目の事例は、重量や力、トルクなど荷重計測での事例です。
荷重計測のアプリケーションには、実に多種多様なモデルがあります。最も単純なモデルは、左図のように1つの荷重センサと1つのΔΣADCを搭載しているモデルです。しかしながら、メカ構造や精度/確度、測定周期によっては、右図のように複数の荷重センサと複数のΔΣADCを搭載しているモデルもあります。例えば、ハイエンドモデルの重量計の場合、計量台の4隅にひずみセンサを置くことで、精度を向上させているようです。
RX23E-A/1unitとRX23E-A/2unitsを使い分けることで、このような多種多様なモデルを共通化ができました。
事例2 : 圧力制御
2つ目の事例は、圧力を制御するアプリケーションでの事例です。圧力を制御する仕組みは、以下の通りです。
- 供給バルブがONで排気バルブがOFFの場合、供給圧力が出力側に供給されて出力圧力が上昇します
- 供給バルブがOFFで排気バルブがONの場合は、出力圧力が減少します
- 上記の二つの動作を繰り返して、圧力を一定に制御します
汎用的なモデルは、左図のように出力圧力を測定する圧力センサが1台だけ搭載されている制御系になっています。一方で、ハイエンドのモデルは、右図のように出力圧力を計測する圧力センサと供給圧力を計測する圧力センサが、それぞれ1台搭載されている制御系になっています。
左図の場合、供給圧力が変動した時に、出力圧力の変動幅が大きいことや整定時間が長くなることが、課題になると考えられます。一方で、右図の場合、供給圧力も測定することで、それらの課題を解決していると考えられます。
このように、RX23E-A/1unitとRX23E-A/2unitsを使い分けることで、汎用モデルとハイエンドモデルの共通化ができました。
事例3: 温度計測
3つ目の事例は、熱電対を利用した温度計測での事例です。
熱電対を利用した温度計測では、熱電対そのもの計測の加えて、基準接点(RJC : Reference Junction Compensation)の温度も計測する必要があります。基準接点の計測には、一般的にPT100が使われます。
温度は、上記に挙げた事例に比べて、変化の遅い信号なので、多くのモデルは左図のように熱電対の計測と基準接点PT100の計測をMUXで切り替えて測定しています。しかし、一部のモデルでは、熱電対の計測と基準接点の計測を同時に行うこともあります。このような場合、基準接点の計測用に、安価なデジタル温度センサを使う場合もあります。つまり、モデルによって、基準接点の計測方法が異なることになります。これは、共通化の観点からは避けたいところです。
そこで、RX23E-A/2unitsを使うことで、右図のように熱電対と基準接点PT100の計測を同時に行うことが可能になったとのことです。
このように、RX23E-A/1unitとRX23E-A/2unitsを使い分けることで、デジタル温度センサが不要になると共に、部品の共通化が図れました。
以上3つの事例をご紹介しました。最後に補足ですが、RX23E-A/2unitsとRX23E-A/1unitは、ピン・コンパチブルで、開発ツールも共通になっております。今回は、ハードウェア視点での共通化について、ご紹介しましたが、もちろんファームウェアの共通化も可能です。
次回は、他製品間での共通化について、ご紹介したいと思います。