RXファミリ RX-Tシリーズは空調機器の室外機や産業用インバータを中心に採用されておりますが、AC-DCコンバータなどの電源制御にも最適な機能を有しており、UPS・パワーコンバータ・EVチャージャといった電源制御アプリケーションでの採用が進んでいます。今回ご紹介するトーテムポールインターリーブPFCは、各種電子機器で必須のAC電源をDC電源に変換するAC-DCコンバータ機能を実現する回路で、一般的なダイオードブリッジによる整流回路+チョッパ回路のPFC回路に対し、更なる効率化(一般的にダイオードブリッジの整流回路による損失分 約40%を削減)可能な回路方式です。
制御には専用品を使用することもできますが、RXファミリ RX-Tシリーズに搭載するPWMタイマ、アナログ回路など、以下「トーテムポールインターリーブPFCを制御するRX-Tシリーズ内蔵機能」により1MCUによる制御も可能です。以下、本機能はインバータ制御に最適な機能ですが、AC-DC含めたコンバータ制御にも同様に最適な機能です。MCUによる電源制御は、専用ICに対し、ソフトウェア制御によるきめ細かい保護、制御の柔軟性、SCIなどによる他ICとの連携など数多くのメリットがあり、システム制御との融和性が高いのが特徴です。
なお、今回ご紹介するトーテムポールインターリーブPFCの制御に使用するMCUは、RXファミリ RX-Tシリーズ RX66Tグループですが、以下機能(RXファミリ共通機能)を搭載するRX26Tなどで同様に実現可能です。
トーテムポールインターリーブPFCを制御するRX-Tシリーズ内蔵機能
- PWM出力タイマ(MTU3,GPT)
- 12ビットA/Dコンバータ(S12AD)
- ポートアウトプットイネーブル(PWM出力緊急停止用)(POE3)
- コンパレータ(過電流検出用)(CMPC)
- 12ビットD/Aコンバータ(コンパレータ基準電圧用)(R12DA)
これら機能により、以下のトーテムポールインターリーブPFC制御を実現しています。
トーテムポールインターリーブPFC構成
PWM出力タイマはスイッチング素子のQ1/Q2、Q3/Q4、およびQ5/Q6を相補PWMで制御し、12ビットA/Dコンバータは、フィードバック制御の電流/電圧検出に使用しています。フェール制御となる過電流制御は、ポートアウトプットイネーブル(POE3)を使用しQ1~Q6の駆動を瞬時に停止させる構成としています。POE3の入力は、コンパレータ+12ビットD/Aコンバータを使用しています。
これにより以下の通り電源効率は最大95%以上、力率は99%以上を達成でき、専用品と同等の性能を発揮します。また今回はパワー半導体に一般的なIGBT+ダイオードを使用しQ1~Q6を構成していますが、高速スイッチング可能なSiCなどを使用する事で更なる効率アップが望めます。
入力電圧(Vrms) | 入力パワー(W) | 出力パワー(W) | 力率(%) | 効率(%) |
---|---|---|---|---|
225.27 | 311.7 | 294.7 | 99.61 | 94.55 |
225.63 | 165.8 | 155.7 | 99.00 | 93.9 |
105.74 | 173.5 | 155.7 | 99.94 | 89.74 |
入力電圧(Vrms) | 入力パワー(W) | 出力パワー(W) | 力率(%) | 効率(%) |
---|---|---|---|---|
227.2 | 307.8 | 294.2 | 99.61 | 95.58 |
105.77 | 169.1 | 155.5 | 99.88 | 91.96 |
また、以下の通り応答試験結果(直流ブレーカにて負荷を0%⇒100%、50%⇒100%に変化させる試験)においても、負荷変動をフィードバック制御する事で電圧を一定に保ち、AC-DCコンバータとして問題なく機能している事が判ります。
今回、インバータ制御の応用としてMCUによる電源制御(トーテムポールインターリーブPFC)の実現性を紹介させていただきました。AC-DCのPFC ICなどの専用品に加えシステム制御との融和性が高いMCUをラインアップする事で、お客様の選択肢が増え、適材適所でご使用頂ける様になります。
今後もお客様ニーズに沿った良質な製品を世に送り出すことで、お客様のイノベーションに貢献していきます。ルネサスRXファミリのさらなる展開にご期待ください。
奥付
- 今回ご紹介したトーテムポールインターリーブPFCの詳細はDigital Power Conversion (Totem Pole Interleaved PFC)アプリケーションノート(R01AN6877)をご参照ください。
- トーテムポールPFCの一般的なシステム構成はウィニング・コンビネーションをご参照ください。
- RX66Tに関する詳しい情報はRX66T製品ページをご参照ください。